紙に印刷した文字の文化を尊ぶ 文章教室と自費出版の明眸社

道浦母都子歌集「花高野」をよむ

  はるかなる魚文の光 第一歌集『無援の抒情』の衝撃的な出発から数えて三七年、作者の第九歌集である。ここには病い、孤独、政治、旅行、そして痛々しい「燃え尽き」感がある。全共闘世代で政治活動をした人々の殆どは、或る時期を過ぎると一般 …

『想像は私のフィギュールに意匠の傷をつける』江田浩司著を読む

『想像は私のフィギュールに意匠の傷をつける』江田浩司著を読む

所属している短歌結社「未来」から昨年十二月号に本書についての書評を依頼された。スペースの関係でかなり削ったので元になった文章を加筆し、リライトした。 本書は詩・短歌・散文詩などで構成されており、手法的にみて聖書の世界で馴染みになっている黙示 …

鈴木美紀子歌集『風のアンダースタディ』を読む

モノ化する主体 歌壇で今話題の新鋭短歌シリーズ(書肆侃侃房)から出版された第一歌集。言葉に対する繊細さと周到さ、あるいは批評性、などはさておき、読んでいると「おかしな感覚」だと思ってしまう歌に度々出くわす。そしてこのおかしな感覚は、石田徹也 …

受話器の沈黙

たまたま所属している短歌誌から「電話」について書くようにとの依頼がきたので、この一月ほど電話のことをあれこれと思い巡らしていた。 電話ほど時代を反映するアイテムも珍しい。帽子とか椅子とか窓とかとは違う。電話の形態は激しく変化してきたからその …

桜井登世子試論2 『冬芽抄』を読む 市原賤香      

桜井登世子試論2 『冬芽抄』を読む 市原賤香  

今回は桜井登世子の第二歌集『冬芽抄』について書いてみたい。 永遠について 紋白蝶のつがいゆらゆらと庭に来てひとつはもじずりに羽をたたみぬ 夏蝶のもつれ合いつつ去りしかば昼ときの間を動くものなし 冒頭の「夏蝶」の二首を読んで立ち止った。第一歌 …

桜井登世子試論(1)  『海をわたる雲』

桜井登世子試論(1)  『海をわたる雲』

短歌を始めてまもなく十四年になる。その全ての歳月を桜井登世子師の薫陶を得てきた。。そしてやはり桜井登世子は稀有な歌人であり、書きとめておきたいことが沢山あることを改めて感じている。手元に六冊の歌集がある。『海をわたる雲』(一九八一年)、『冬 …

『行け広野へと』――の言語の構築

『行け広野へと』――の言語の構築

今話題の『行け広野へと』(服部真里子歌集)を読んだ。 心憎いまでに言葉が選び抜かれた、明晰な、そして視線の遠い遙かな感じのする歌々は、実に魅力的だ。そして後書きにあるようにこの歌集には「君」「あなた」「恋人」、あるいは「父」「姉」「母」「祖 …

祖母のふるさと論田ー富山の旅 ー綺羅 二〇一五年夏号

庄川を飛びめぐる鳶の大き輪に総べられているわたくしの朝 忘却は優しきものか論田のそらに溶けゆく白きうろこ雲 ろんでん、とつぶやくわれのこえ寂し陽のさす道に秋が来ている 秋桜の風に崩るる道のべに祖母(おおはは)四歳息づくごとし 論田の道のかた …

花束ひとつ ――冬野虹のこと

花束ひとつ ――冬野虹のこと

花眩暈わがなきがらを抱きしめむ 冬野虹の名を知る人は多くはないと思う。しかしその仕事は私を惹きつけてやまない。私は紹介もかね、冬野虹の人となりと作品について、少し書いてみたい。私が今でも時々冬野虹を思い出すのは、秋の陽を浴びた草の実をみつけ …

ことばは動態保存 

ことばは動態保存 

私は短歌を詠み始めてまだ十年少々しかたっていない。短歌の世界では、二十歳すぎてから短歌を始めた人が「遅い出発だった」などと言う。半世紀も生きてきてからやっと始めた私。開き直るしかない。 さて、私は文語で短歌を詠み、現代仮名遣い(新仮名)を使 …