紙に印刷した文字の文化を尊ぶ 文章教室と自費出版の明眸社

ふるさととは何か―― 服部えい子歌集『産土とクレーン』について

 昨年十月に上梓された本歌集は多くの話題を呼び、日本歌人クラブ南関東ブロック優良歌集賞を受賞した。二〇〇七年から二〇一七年までの歌が収められており、その間にあの福島第一原発事故が起きた。この歌集の通奏低音となっている故郷福島に関わる歌が、苦 …

解説 『花こぼれくる』

解説 『花こぼれくる』

解説          桜木由香 この歌集は若槻敦子さんの第一歌集である。縁あってこの歌集を編むお手伝いをさせて頂いた。原稿を拝見していると静かな八王子の高台での生活ぶりが目に浮かんできた。豊かな自然に囲まれた土地で日々をかさねることそれ自 …

44

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四十四 市原賤香 ある数字が自分にとって重い意味を持つことはないだろうか。私の場合は四十四という数字で、これは母澄子の享年だ。母が亡くなったとき私は十五歳になったばかりだった。四十四歳という年齢はとても遠く感じられ、自分がそこまで生きるとも …

≪弾談の会ぴあ~の≫の思い出 4

≪弾談の会ぴあ~の≫の思い出 4

回想録を書くことについて 私にとっては貴重で稀有な弾談の会のスタッフとしての十二年間だったが、果たしてまったく無関係の人にこの経験談はいかがなものなのか。読んでもらうのに、辛抱がいるだろうか。少し端折って書いた方がいいかもしれない。しかし、 …

≪弾談の会ぴあ~の≫の思い出 3

≪弾談の会ぴあ~の≫の思い出 3

第五回公演「舞・人・音」二〇一一年十一月二十日 武蔵湖公会堂 ゲスト在家育江さん。 私は初めてベジャールの演出による舞踊を見た時の驚きを忘れられない。「ボレロ」と「春の祭典」を観た。人間の身体の動きの、考えられうるぎりぎりの可能性を突き詰め …

《弾談の会ぴあ~の》の思い出(2)

《弾談の会ぴあ~の》の思い出(2)

水の会その1 品川編 二〇一〇年四月一九日 講師 陣内秀信氏 第二回公演の講師を務めてくださった陣内秀信氏を囲んで「水の会」が誕生した。江戸時代の東京がいかに水路を活用していたかをつぶさに見て、現代に通じる街の秘められた姿を知ろうという試み …

《弾談の会ぴあ~の》の思い出 1

《弾談の会ぴあ~の》の思い出 1

発足のいきさつ 弾談の会のこれまでのことを振り返り、懐かしむと共にスタッフとしてずっとかかわってきたことが私にとってどんな意味があったのか、多くの人々や音楽との出会いが私をどんなふうに楽しませてくれてきたのか、ここで一歩立ち止まり、考えてみ …

道浦母都子歌集「花高野」をよむ

  はるかなる魚文の光 第一歌集『無援の抒情』の衝撃的な出発から数えて三七年、作者の第九歌集である。ここには病い、孤独、政治、旅行、そして痛々しい「燃え尽き」感がある。全共闘世代で政治活動をした人々の殆どは、或る時期を過ぎると一般 …

喪いし声は  ―――ヤエコさんの思い出

喪いし声は  ―――ヤエコさんの思い出

前原の坂を下りきってすこし行った住宅街の中に、ヤエコさんのお宅があった。閑静な一角で、落ち着いた感じの庭のある二階家だ。ヤエコさんが発作に見舞われたのは夫の亡くなった後すぐの通夜の時だという。 ヘルパーになってしばらくたった頃、その重い任務 …

地上の夢の裏面

地上の夢の裏面

私は二十歳ぐらいだった。もう随分ながく、恋人から連絡がこない。数ヶ月は経ってしまったようだ。あのひととの間はもう終わってしまったのね……。そう、どんなにあがいても無駄だ。去ってしまった心はもう帰ってはこない。絶対に帰ってこないのだ。いまこそ …